深瀬和久は、事務機会社に勤めるしがないサラリーマン。
今までの人生でも、取り立てて目立つこともなく、平凡を絵に描いたような男だ。
趣味と呼べるようなことはそう多くはなく、敢えていうのであればコーヒーを飲むこと。
そんな深瀬が、今、唯一落ち着ける場所がある。
それは〈クローバー・コーヒー〉というコーヒー豆専門店だ。
豆を売っている横で、実際にコーヒーを飲むことも出来る。
深瀬は毎日のようにここに来ている。
ある日、深瀬がいつも座る席に、見知らぬ女性が座っていた。
彼女は、近所のパン屋で働く越智美穂子という女性だった。
その後もしばしばここで会い、やがて二人は付き合うことになる。
そろそろ関係を深めようと思っていた矢先、二人の関係に大きな亀裂が入ってしまう。
美穂子に『深瀬和久は人殺しだ』という告発文が入った手紙が送りつけられたのだ。
だれが、なんのために――。
深瀬はついに、自分の心に閉じ込めていた、ある出来事を美穂子に話し始める。
全てを聞いた美穂子は、深瀬のもとを去ってしまう。
そして同様の告発文が、
ある出来事を共有していた大学時代のゼミ仲間にも送りつけられていたことが発覚する。
”あの件”を誰かが蒸し返そうとしているのか。
真相を探るべく、深瀬は動き出す。
大切な仲間の事故死の真相と脅迫文の犯人を自ら捜しはじめたのにウジウジしてる主人公。
対人関係のモヤモヤや胸躍らない展開に着地点が予想出来ない物語の行方はいつも通りです。
今回はキーとなっているコーヒーの描写が豊かで、コーヒー好きとしては惹かれます。
三割読んだあたりからジェットコースターのように加速して読み切ってしまいました。
登場人物の背景の作り込み方や、それぞれの感情の動きの表現などは、さすが湊かなえさん。
どんな人間だったのかを巡る中で浮かぶ、知っているようで知らなかった広沢由樹の人物像。
学生時代の頃に思いを馳せながら、失ってしまった時間を愛おしく感じられました。
湊かなえさんの小説は自分なりに推理しながら読んでいくのですが毎回はっとさせられます。
さまざまな人を疑い、最後にめでたしなのかと思っていたら、こんなオチが待っていました。
最後のどんでん返しで終わりと思わせて実は、さらに深い落とし穴が用意されていたのです。
今回は思ったほど驚かなかったな、とラスト2ページの衝撃。さすが湊かなえさんです。
最後のページを読み終えて、鳥肌と共に思わず「さすが」と呟いていました。
ドラマと小説で結末が違うと聞いていましたが、小説も面白くドラマも良かったです。
ドラマのほうは色々な登場人物やエピソードを混ぜて、ドラマティックにしていました。
「リバース」湊かなえさんのコーヒーの芳醇な香りを味わいながら楽しみたい一冊です。


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「リバース」湊かなえ
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