「有川さん、書いてみたら?」その一言で、奇跡は起きた。
佐藤さとるが生み出し、300万人に愛された日本のファンタジーを、有川浩が書き継ぐ。
ヒコは「はち屋」の子供。
みつ蜂を養ってはちみつをとり、そのはちみつを売って暮らしている。
お父さん、お母さん、そしてみつばちたちと一緒に、全国を転々とする小学生だ。
あるとき採蜜を終えたヒコは、巣箱の置いてある草地から、車をとめた道へと向かっていた。
「トマレ!」
鋭い声がヒコの耳を打ち、反射的に足をとめたヒコの前に、大きなマムシが現れた――
村上勉の書き下ろし挿画がふんだんに入った、豪華2色印刷
これまで先人の作家さんたちの作品にリスペクトされてきたことがよくわかる有川浩作品。
ですが、これまではハッキリ作品名を挙げたり続編を書いたりはしてませんでした。今回は、
佐藤さとるさんの50年位前の「だれも知らない小さな国」のオマージュ続編みたいです。
読みやすい文章です。子どもさんでも小学校の高学年くらいなら読めます。
大人が読んで物足りないとか、つまらないということもなく、すごく楽しめました。
これは確かに、佐藤さとるさんの元祖コロボックルの世界の物語の続編ですが、
「矢印の先っぽの国コロボックル小国」そのままの物語というわけではないです。
出だしは村上勉さんの挿絵とあいまって、佐藤さとるさんが乗り移ったみたいでした。
だけど、そのままの物語の続きではなくて、有川浩ワールドでもあります。
日本中を旅する「はち屋」(養蜂家)の子供を主人公にしたのは聡明なアイデアです。
描かれている時代が、「せいたかさん」たちの年代よりはかなり現代寄りになっています。
佐藤さとるさんの言葉によれば有川浩さんは「当代一流のストーリーテラー」。
さすがにそう呼ばれるだけあって、読んでる間、とてもワクワクできて楽しかったです。
今までのコロボックル物語を読んでいた時の、優しい空気にほっこりと包まれる感覚。
そこがきちんと引き継がれているように感じられる話だと思います。
世界観と優しい空気を受け継ぎながら、こういう話の広げ方もできることに感動しました。
本の最後に佐藤さとるさんから「有川浩さんへの手紙」と題する文章があります。
「こういう形で物語を継承してくれる、という例はあまり知りません」と言われてますが、
この作品を継承するには、ふさわしい形であるように思います。また、ここには
「楽しく、面白く読み終えてため息をついたことです。こんなのを自分でも書けばよかった」とか、
「これはやはり有川さんの世界です。」ともあって、まさしく、という印象です。
いやぁ~、楽しかったです。そしてとても嬉しいです。
こんな風に広がった新しい世界は、この先どんな物語を見せてくれるのでしょうか。
この先の展開では元祖コロボックル物語の世界との交錯はあるかもしれない等々、
続編への期待でワクワクして、待ち遠しいような思いを感じています。
味わいを深く感じて、また最初のページに戻って何度でも読み返したい気持ちもあります。
佐藤さとるさんをお好きな方も、有川浩さんをお好きな方も一読をお勧めします。
そして、たくさんの子どもたちにも読んでほしいと思います。
「だれもが知ってる小さな国」有川浩さんのリスペクトが伝わってくるオマージュです。

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「だれもが知ってる小さな国」有川浩
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