人形遣い月草と姫様人形お華の迷コンビが江戸の事件を快刀乱麻!
江戸は両国。暮れても提灯の明かりが灯る川沿いの茶屋は、夜も大賑わい。
通りの向こうの見世物小屋では、人形遣いの芸人、月草の名が最近売れてきている。
なんでも、木偶の姫様人形、お華を相方に、一人二役の話芸を繰り広げるのだという。
それも、話芸が目当てというより、お華に会いに来るお客が多いというのだ。
何故なら。“まことの華姫”は真実を語る――
姉を殺したのは、実の父かもしれないと疑う、小屋一帯の地回り山越の娘・お夏。
六年前の大火事で幼な子を失い、諦めきれずに子ども捜しを続ける夫婦。
二年前に出奔したまま行方知れずの親友かつ義兄を探しにはるばる西国からやってきた若旦那。
そして明らかになる語り部・月草の意外な過去……
心のなかに、やむにやまれぬ思いを抱えた人々は、今日も真実を求めてお華の語りに耳を澄ます。
しかし、それは必ずしも耳に心地よいものばかりとは限らなくて……
快刀乱麻のたくみな謎解きで、江戸市井の人々の喜怒哀楽を描き出す、新たな畠中ワールド!
帯の記述から、たいしたことない事件の流れを大仰に説明して解決に導くような設定の、
ありがちな安楽椅子探偵の流れを想像していましたが、違っていました。
癖のありそうな主人公に出だしで驚きましたが、読み進むと慣れました。
この作品の魅力は、ほのぼのした家族愛、人々のやりとり、登場人物の言動などに
垣間見られる感情の機微にあります。見過ごされがちですが実は畠中恵さんの真骨頂です。
お金持ちで人望もあるお父さんとお嬢様を中心に、裕福な人達がたくさん出てくるので、
貧しさが直接の原因ではないにしても、心に傷を負った人々を描いていきます。
今よりもずっと質素な暮らしをしていた時代。夢のあった盛り場と見世物小屋を舞台に、
登場人物たちの心の行き先が気になってしまうようなお話が数編詰まっているのです。
例え地位やお金があっても一度トラブルが起きれば、すぐに解決できないのがリアルです。
困難な状況を切り抜けるために、一生懸命できることをしようとするのです。
江戸時代が舞台のファンタジーですが、現代に置き換えても解決は難しいでしょう。
主人公とお父さん、月草とお人形、絡み合った関係の先が気になります。
「まことの華姫」畠中恵さんの一風変わった時代劇。続編が楽しみです。

楽天からも購入できます。

「まことの華姫」畠中恵
T/Bさせてもらいました。
これからもよろしくお願いいたします。
じゃあね