俺はもう、誰かの脇役ではない。
深化したマキメワールド、開幕!
砂漠の中、悟浄は隊列の一番後ろを歩いていた。
どうして俺はいつも、他の奴らの活躍を横目で見ているだけなんだ?
でもある出来事をきっかけに、彼の心がほんの少し動き始める――。
西遊記の沙悟浄、三国志の趙雲、司馬遷に見向きもされないその娘。
中国の古典に現れる脇役たちに焦点を当て、人生の見方まで変えてしまう連作集。
時代劇にも驚きましたが、その次は中国古典が題材の短編集で、戸惑いが大きかったです。
中島敦さんの『李陵』を読んでいたので、かろうじて読み進めて行けました。
中島敦「悟浄出世」へのオマージュ「悟浄出立」、『三国志』の英雄の憂い「趙雲西航」、
四面楚歌の窮境での寵姫の闘いを描いた「虞姫寂静」、
刺秦に身を投じた荊軻と同音の名を持つ男「法家孤憤」、娘から見た「父司馬遷」。
すべての作品で「事件」を知る主人公は「静」。でも心の中はに激情が渦巻いています。
そして他者との関わりの中に自己を見出してゆく生き方が五編に共通しています。
「悟浄出立」では八戒と悟空を通して、「趙雲西航」では張飛と諸葛亮を通して、
「虞姫寂静」では項羽と范増と伏せられた秘密を通して、
「法家孤憤」では奇縁で結ばれた荊軻を通して、「父司馬遷」では父と兄を通して、
脇役ならぬ主人公たちが自分の生き方を見出していくのです。楽しさはないのですが、
作品の主人公それぞれの腹をくくった瞬間、覚悟といったものが鮮烈に綴られています。
新しくスポットを当てた各主人公の真摯な描き方に、とても好感を覚えました。
たぶん中島敦作品を未読でも十分に楽しめるし泣けます。作品への敬意も感じました。
今回は古典に枠組みを借りながら、他者を通して自己を見出す人間の生き様を描き出す、
万城目ワールドの新境地。これまでとは違う香り高い名文を味わいました。
「悟浄出立」万城目学さんの深化を感じさせる換骨奪胎の意欲作。次も楽しみです。

楽天からも購入できます。

「悟浄出立」万城目学
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悟浄出立 -
中国の古典も面白いかも?
感想はこちら⇒くりきんとんのこれ読んだ
俺はもう、誰かの脇役ではない。深化したマキメワールド、開幕!
砂漠の中、悟浄は隊列の一番後ろを歩いていた。
どうして俺はいつも、他の奴らの活躍を横目で見ているだけなんだ?
でもある出来事をきっかけに、彼の心がほんの少し動き始める――。
内容(「BOOK」データベースより抜粋)
脇役でも。
本書は中国の古典に現れる脇役たちに焦点を当て短編集。
日本人にも比較的馴染みのある...
悟浄出立 万城目学
俺はもう、誰かの脇役ではないのだ。「西遊記」の沙悟浄、「三国志」の趙雲、司馬遷の娘…。人生の見方まで変えてしまう連作集。(BOOKデータベースより)
【目次】
悟浄出立/趙雲西航/虞姫寂静/法家孤憤/父司馬遷
自分のレベルの低さに泣きたくなった・゚・(ノД`;)・゚・
とりあえず、最初の西遊記しか知らない。
というよりも、わたしは西遊記...
悟浄出立 万城目学
新潮社
2014.9.12
悟浄出立
趙雲西航
虞姫寂静
法家孤憤
父司馬遷
万城目学×西遊記、面白くないわけがない
と、かなりの期待をもって『悟浄出立』を読む。
… なんだかトーンが真面目…?
これはきっと旅が進むにつれて、はじけるんだわ
と、『趙雲西航』に入ったら…
趙雲?
張飛と趙雲?
諸葛亮(りょう)? 諸葛孔...
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