湊かなえ原点回帰! 人の心の裏の裏まで描き出す極上のイヤミス6編!!
女優の藤吉弓香は、故郷で開催される同窓会の誘いを断った。
母親に会いたくないのだ。
中学生の頃から、
自分を思うようにコントロールしようとする母親が原因の頭痛に悩まされてきた。
同じ苦しみを抱えた親友からの説得もあって悩んだのだが…。
そんな折、「毒親」をテーマにしたトーク番組への出演依頼が届く(「ポイズンドーター」)。
私はあなたの奴隷じゃない! 母と娘。姉と妹。男と女--。
ままならない関係、鮮やかな反転、そしてまさかの結末。
あなたのまわりにもきっといる、愛しい愚か者たちが織りなすミステリー。
呆然、驚愕、爽快、感動―さまざまに感情を揺さぶられる圧巻の傑作集!!
直訳すれば「毒娘・聖母」。最近、親子関係で「毒親」「毒母」という言葉が流行し、
独り歩きしているようです。そんな身近な人の善意が悪意に変わる様が興味深い連作集。
事件に至る経緯、それぞれの考えの流れが巧みに描かれていて、無理なく読めました。
表題作は、娘の立場と母の立場で見え方が百八十度変わる作りの、対になった2作品です。
読者によって違ってくると思いますが、どちらの立場に共感しても対応できる筆力は流石。
芸能界入りした娘が、母親の「毒親」ぶりをテレビで告白するというショッキングな展開。
番組で母親を攻撃するという行為は露悪的で、想像しても勇気がいることだと思います。
リアルタイムで大きなインパクトの高視聴率。とても現代的でリアルさを感じる設定です。
その後のことが不幸な流れになっていくのを想像できなかったことが愚かしく哀れでした。
自分でも過去に母親のことを嫌だと思うことが多々ありましたが、一方的な思い込みで、
視方を変えると、もしかしたら違うかも…と自らの人生についても考えさせられました。
他作品も、いかにもありそうな設定を巧みに作っていて、興味深く読むことができました。
多くの人が、それぞれ共感を覚えたり反感を感じるキャラを発見出来そうです。
例えばあの時、もう少し早く出逢っていたら関係が違ったかも?とも思いましたが、
人間は冷静さを失った混乱のさなかでは解りあうのは難しいと思った次第です。それでも
思っているだけでは伝わらない事が沢山あるから、言葉で伝えて話をしたいと思いました。
2016年第155回直木三十五賞候補作に選出。全6編がWOWOWで連続ドラマ化が決定です。
「ポイズンドーター・ホーリーマザー」湊かなえさんの優れた観察力がわかる短編集です。

楽天からも購入できます。

「ポイズンドーター・ホーリーマザー」湊かなえ
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