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「真実の10メートル手前」米澤穂信

高校生の心中事件。
二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累心中と呼ばれた。
週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの太刀洗と合流して取材を開始するが、
徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める…。
太刀洗はなにを考えているのか?滑稽な悲劇、
あるいはグロテスクな妄執―己の身に痛みを引き受けながら、
それらを直視するジャーナリスト、太刀洗万智の活動記録。
日本推理作家協会賞受賞後第一作「名を刻む死」、
本書のために書き下ろされた「綱渡りの成功例」など。
優れた技倆を示す粒揃いの六編。

「さよなら妖精」「王とサーカス」に続く太刀洗万智のシリーズ三作目です。
「王とサーカス」は海外が舞台の長編でしたが本作は日本が舞台の短編集となってます。
時系列としてはフリージャーナリストとして活動していた前作よりも前のお話となります。
月刊誌の記者となった太刀洗万智が様々な事件について推理を展開していく内容です。
同僚の死をきっかけにフリーの記者になったのが27歳ころのことから考察すると、
「王とサーカス」を挟んで3年くらい前から数年後の話で構成されているようです。
一作目の「さよなら妖精」の後日譚も収録しています。
「さよなら妖精」では主役でもなく、その人間性も思考も謎の多かった太刀洗万智。
彼女がどんな考えを持ち、どう行動するのか。迷い、葛藤も含めて描かれていきます。
仕掛けられたトリック以上に、その雰囲気に、このシリーズの魅力があると感じられます。
太刀洗万智は名探偵の側面を持ってはいても、同時に単に無力な一個人であることを明示。
推理はできても、問題の全てを解決できる力を持っているわけではないのです。
そのジレンマや葛藤が作品の独特な湿っぽいムードを醸成しているようです。
ほとんどの話で太刀洗万智の傍に、それぞれ語り手が登場します。
真相が明らかになる一方で、語り手が太刀洗万智の内面を理解していく過程も秀逸です。
最後は悲劇で終わるものが多いです。が、それまでの話を辿ってみると一転します。
凄惨なことが簡単に起こるような、この世の中で厳しい経験をしてきた太刀洗万智が、
自分の信じる道を歩き始めて、その中で小さな救いを見つけることができたことによって、
いつ落ちてもおかしくない道であっても、これからも歩き続ようという思いを確信。
そんな彼女の決意と矜持を明確にした、覚悟に満ちた一冊と思えます。
なので、シリーズでは本書が一番、前向きな作品なんじゃないかと思います。
湿っぽさに気が沈むというよりは、彼女のような強い人間になることは厳しそうだけど、
自分もそれなりにやってみようという、勇気をもらえる一冊と思えました。
「真実の10メートル手前」米澤穂信さんの太刀洗万智のシリーズ。次作が楽しみです。

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「真実の10メートル手前」米澤穂信
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